塗装が出来ない屋根材「セキスイかわらU」とは？正しいメンテナンス方法について
2024/05/01
塗装が出来ない屋根材「セキスイかわらU」とは？正しいメンテナンス方法について
屋根材には「瓦屋根」「スレート屋根」「金属屋根」などの種類があります。
それぞれに特徴があるのですが、日本ではスレート屋根が多く普及しています。
ただ、スレート屋根の多くは表面に塗装をすることで防水や耐熱効果を維持することができるのですが、いくつか塗装をすることができないスレート屋根もあります。
そこでここでは塗装をすることができない「セキスイかわらU」の特徴やメンテナンス方法について紹介していきたいと思います。
まったく性能が違う2種類が存在するセキスイかわらU
「セキスイかわらU」について紹介をしていくのですが、実はこのセキスイかわらUには2種類存在しており、塗装をすることができないのはその片方のものです。
そこでまずその2種類の違いについて紹介していきます。
✅1975年～1990年製造のセキスイかわらU
セキスイかわらUという製品は1970年～2007年という長期間に渡って販売されてきた大ヒット商品であり、全国で50万棟以上の建物で使用されたという人気商品です。
「かわら」という名前がついてはいますが本物の粘土瓦を使うのではなく、瓦のようなスレート（セメント瓦）です。
本物の粘土瓦のような形状や扱いやすさが人気となりましたが、大きく2種類あって片方が耐久性が低いことで問題となった製品でもあります。
まず1975年～1990年に製造販売されていたのは「アスベストが10～15％含まれている」タイプの製品です。
こちらの製品はかなりの年数が経っていても表面の塗膜が剥がれていなかったり、ひび割れなどもしにくいものとなっており、高い耐久性を誇る製品ということで大人気となりました。
こちらの製品は基礎耐久性が高いため、塗装をすることも可能となっています。
つまり「塗装することができない」「耐久性が低い」というのはこちらのタイプではないということになります。
✅1991年～2007年製造のセキスイかわらU
こちらはこの当時問題になったアスベストに配慮して「完全無石綿化（ゼロアスベスト=ノンアスベスト）」で製造された製品となっています。
製品に含まれている繊維がアスベストからビニロンへと変更されたことによって耐久性が低く、塗膜が剝がれやすい製品となってしまいました。
比較的年数が経っていないにも関わらず、「ひび割れする」「破損する」「塗膜が剥がれる」という症状が多く出ており、問題のある屋根材となっています。
この時期に製造されたスレート屋根はアスベストを含まずに急遽製造したようなものが多く、強度が足りない、塗装することができないというような製品が多く、「パミール」などに代表されるような社会問題にもなりました。
つまりセキスイかわらUという製品で塗装することができない製品というのはこの時期に製造されたものということになります。
耐久性が低い方のセキスイかわらUで発生する劣化症状とは
色々と問題が発生するのはアスベストを含んでいない方の製品です。
そこでここでは耐久性が低い方のセキスイかわらUで発生する劣化症状について紹介していきます。
塗膜が剥がれていく
こちらのセキスイかわらUは時間が経つと塗膜が剥がれて中の基材である白い下地部分が見えてしまうということがあります。
屋根が白く見えるというのはこれが原因だと言えます。
塗膜が剥がれてしまうと、雨水が内部まで浸み込んでいきやすくなり、なかなか乾かない、苔やカビが発生するという状態になっていきます。
塗膜が剥がれていくというのは他のスレート屋根でも発生する症状ですが、このセキスイかわらUの場合は塗膜が剥がれていくまでの期間が圧倒的に短いというのが特徴です。
設置してそれほど経っていない製品でもどんどん塗膜が剥がれていってしまいます。
また、このように塗膜がすぐに剥がれていってしまうという特徴があるために「塗装ができない」と言われています。
塗装することはできるのですが、すぐに剥がれてしまうために無意味になってしまうのです。
ひび割れしやすい
台風などの際に飛来物が当たったというような物理的な衝撃を与えたわけでもないのにひび割れが起きるというのも特徴です。
よく見ると細かいひび割れが起きているということが多く、細かい補修をしても追いつかないということがあります。
これは含まれている繊維である有機繊維ビニロンとセメント基材との結びつきが弱いということが関係しています。
より悪い症状として表面の塗膜があるのに、その内側でひび割れしているということもあります。
ひび割れで済まずに細かく粉砕されているような場合もあります。
このようにひび割れしやすい、破損しやすいというのも特徴だと言えるでしょう。
屋根材が大きく破損する、崩れる
水分が内部に溜まりやすい屋根材であることが関係して起こる症状です。
屋根材の端部分からボロボロと崩れたりしてきて、剥離、剝落を繰り返していきます。
塗膜と内部の基材部分まで一緒に崩れてきて白い基材がむき出しになるような場合もあります。
これは「パミール」でもよく見られる症状です。
ここまで崩壊が進んでくると誰かが上に乗るとほぼ確実に踏み壊してしまいます。
まず屋根が気になったとしても屋根に上るのが危険ですし、専門の業者であっても四つん這いになって慎重に移動していく必要がある状態だと言えます。
〈実際の施工例〉
セキスイかわらUを見分ける方法とは
セキスイかわらUには耐久性が高いものと低いものとがあることがわかっています。
ではその二種類はどのようにして見分けていけば良いでしょうか。
ここではその見分け方について紹介していきます。
建物の築年数
セキスイかわらUには1975年～1990年に製造販売されたものと1991年以降に製造されたものとがあります。
そのため、その建物がいつ建てられたかによって判断できる場合があります。
✅もし1990年以前に建てられたもので、セキスイかわらUが使用されているのであれば、それは耐久性が高い方だと言えます。
✅1991年以降に建てられたものであれば耐久性が低い方である可能性があります。
ただ、1991年、92年あたりに建てられた場合はメーカーが持っていた在庫を使用している可能性があるため、どちらか判断できないこともあります。
だいたいの目安程度に考えておけば良いでしょう。
屋根材の刻印
自分で新築で建てた場合などは築年数ははっきりしているのですが、中古物件を購入した場合などは築年数などが曖昧な場合があります。
そういった場合には屋根材セキスイかわらUの刻印を確認するという方法があります。
セキスイかわらUは棟にロット番号が刻印されています。
ここに刻印されているのは西暦の下一桁だけですが、建物が建てられただいたいの年数がわかればそれと比較していつのものかわかるようになっています。
だいたいの築年数とこの刻印を合わせて考えて判断していきましょう。
劣化症状で判断する
実は築年数や刻印よりも判断しやすいのが劣化症状です。
1991年以降に製造されたアスベストを含まないタイプのセキスイかわらUはアスベストを含むタイプのものと比べると劣化症状がはっきりと出てきます。
塗膜が剥がれている、ひび割れしている、基材が崩れているなどの症状が出てきている場合にはそれは耐久性が低い方だと判断できるでしょう。
こうした症状が出てきている場合は塗装などをすることを考えず、屋根材を交換した方が良いでしょう。
実際に劣化症状が出てきた場合には塗装よりも交換を
セキスイかわらUを使用していて劣化症状が出てきた場合には塗装を考えるのではなく、屋根材を交換することをおすすめします。
ここではその理由と方法を紹介していきます。
塗装メンテナンスをおすすめしない理由とは
スレート屋根は塗装が薄くなる、剥がれてくると塗装メンテナンスを行うことでその機能を回復することができます。
しかしセキスイかわらUの場合はそのメンテナンス方法はおすすめしません。
塗装は表面の塗膜を補うものです。
しかしセキスイかわらUの場合は塗膜が定着しにくく、すぐに剥がれていってしまうこととなります。
むしろ塗装メンテナンスを行う際に高圧洗浄を行って古い塗膜を剥がすのですが、その高圧洗浄を行うたびにセキスイかわらUはどんどん崩れていきます。
そのため塗装メンテナンスはおすすめできないのです。
カバー工法を行う
カバー工法は既存の屋根材を撤去することなく、その上から新しい屋根を設置するという工法です。
ただ、屋根が二つになるため、重い屋根材は使えません。
この場合はセキスイかわらUの上から金属屋根などを設置してカバーすることとなるでしょう。
しかし上に新しい屋根を設置すると下側の屋根を補修することはできなくなります。
そのため、既存のセキスイかわらUの劣化があまりにも進んでいる場合などはこの方法を使うことはできません。
その場合は後述の葺き替え工事を行うこととなるでしょう。
葺き替え工事を行う
こちらは既存の屋根材、ルーフィングや野地板などの下地などをすべて撤去して、新しく下地から設置していくという工法です。
まったく新しい屋根にすることができるため、耐用年数などは長く期待できるのですが、既存の屋根材の撤去費用、処分費用、新しい屋根の設置費用などがかかってくるため、工事の費用は高額なものとなります。
セキスイかわらUの劣化が大きく進んでいる場合はこの葺き替え工事を行うのが一般的だと言えます。
まとめ
セキスイかわらUは長く使用されたヒット商品ですが、大きく分けて二種類あるということが特徴です。
そのうちアスベストが含まれていない方は耐久性も低く、トラブルも多く発生しています。
こちらのセキスイかわらUを使用していて、すでに劣化症状が出てきているという場合には塗装メンテナンスなどを行わずにカバー工法もしくは葺き替え工事を行うことをおすすめします。
