メンテナンスフリーの屋根材はある?屋根材別の耐用年数を解説
2023/10/27
屋根材は一度設置すると永遠にそのままで良いというわけではありません。
屋根材の寿命がくれば交換したり補修したりするという必要が出てきます。
その際には工事期間も必要となりますし、費用もかかることとなるので、できればあまりこういった工事をしたくなりというのが本音かもしれません。
では、屋根に「メンテナンスフリー」という屋根材はあるのでしょうか。
ここではメンテナンスフリーの屋根材があるのか、屋根材別の耐用年数はどれくらいなのかといったことについて紹介していきたいと思います。
メンテナンスフリーの屋根材はあるのか
一度設置したら永遠にメンテナンスする必要がないというメンテナンスフリーの屋根材があれば理想的だと言えるのですが、結論から言うと「メンテナンスフリーの屋根材はありません」
どのような屋根材であっても必ず寿命は来ますし、メンテナンスは必要となります。
ではなぜメンテナンスフリーの屋根材という言葉が使われているのでしょうか。
これは屋根材によって耐用年数が違っており、中には非常に長い耐用年数のものもあるということが関係しています。
例えば屋根材本体の耐久性、耐用年数だけでいうのであれば日本で昔から使われてきた「瓦屋根」などは非常に長い耐用年数を持っています。
中には50年以上の耐用年数のものもあり、それが実質的にはメンテナンスフリーと言われている部分もあります。
ただ、一般の住宅やお寺などで広く使われてきた瓦屋根はそれ自体が耐久性の高いものであってもその周辺の部材が劣化したりするということがあります。
また、地震が多い日本では瓦屋根のように「重い屋根」は耐震性の問題があるということもあります。
そういった部分も含めて屋根材を選んでいく必要があると言えるでしょう。
屋根材ごとの耐用年数の目安とは
屋根材は素材によって耐用年数が違っています。
まずはそれぞれの素材の耐用年数とかかる費用の目安を紹介していきます。
ガルバリウム鋼板などの金属屋根
近年急激に増えている金属屋根です。
金属屋根は瓦屋根などの10分の1ほどの重さという「軽さ」が耐震性の向上に役立つということで耐震リフォームを行う際によく使われる屋根材となっています。
また、断熱性が高く建物の中に熱を伝えにくいというメリットがあるだけでなく、防音性が高く雨音があまり気にならないという強みもあります。
さらに防火性が高く、火事の時にも安心という屋根材です。
ただ、金属屋根ということで強い衝撃を受けるとへこんでしまうということはあります。
耐用年数は20~30年という長さがあり、メンテナンスも15~20年程度は大丈夫です。
費用は製品によって違ってきますが、たいていは1㎡あたり5000~1万円程度のものが多くなっています。
【山田工芸でおこなった金属屋根の施工実績】
スレート屋根
こちらも「薄い」「軽い」「安価」というメリットが多く、扱うことができる職人や業者も多いことから広く人気となっている屋根材です。
使いやすい屋根材ではあるのですが、耐衝撃性、防音性、断熱性などについては金属屋根に劣っています。
また、表面の塗膜については紫外線や雨水などによって劣化していくため、10年に1度ほどは塗装をする必要があります。
そういったメンテナンスさえ行っておけば耐用年数は25~30年ほどはもちます。
ただ、スレート屋根で注意しなければならないのは2004年以前の製品については「アスベスト(石綿)」が含まれているということです。
健康に害を及ぼす成分であるために現在は取り扱いが禁止されている成分となっています。
古い建物などを補修する際にはアスベストの飛散には注意が必要です。
1㎡あたり5000~12000円程度と製品によって幅が広いという特徴もあります。
日本瓦、瓦屋根
昔から日本で幅広く使われている屋根材が「瓦」です。
瓦の中でも「陶器瓦」と呼ばれる昔からある日本瓦は特に耐久性、遮音性、断熱性、などに優れており、塗装をする必要もありません。
耐用年数も50~60年ほどとあらゆる屋根材の中でもトップクラスの長さを誇っており、もっともメンテナンスフリーに近い屋根材と言えるでしょう。
また、破損してもそれがその1枚だけなのであれば、その1枚だけを交換するということも可能なため広い範囲の屋根材を交換しなければならないものよりも効率的です。
こうしたメリットが多い日本瓦なのですが、「重い」「値段が高い」「扱える職人が少ない」というデメリットもあります。
特に「重い」というのは耐震性の面からも大きなデメリットとなり、避けられることが多い理由となっています。
そのため、屋根の大規模なリフォーム、耐震リフォームを行う際には日本瓦から金属屋根などに替えるということも多くなっています。
1㎡あたり9000~12000円程度の費用がかかります。
セメント瓦
セメント瓦は文字通り、セメントを主成分とした瓦です。
こちらの瓦も断熱性や防音性に優れた屋根材なのですが、「定期的に塗装が必要」「日本瓦よりは耐久性が低い」「重い」といったデメリットがあります。
耐用年数が25~30年程度、メンテナンスも10~15年ほどで行う必要があるために注意が必要です。
ただ、日本瓦よりも安いというメリットがあり、1㎡あたり6000~9000円の費用となっています。
トタン屋根
最近は見ることが減ってきた金属屋根です。
昔はかなり広く使われており、工場などでまだ使われていることがあります。
トタン屋根は防音性や耐熱性も低く、耐用年数も10年ほど、メンテナンスも7~10年ほどと短い期間で行わなければならないというデメリットが多い屋根材なのですが、とにかく「軽い」「安い」という強みがあるため、「費用を抑えたい」という時におすすめの屋根材となっています。
1㎡あたり5000円程度という安さがトタン屋根のウリとなっていますが、近年は利用されることは減ってきています。
アスファルトシングル
こちらは日本ではあまり見ることのない屋根材ですが、海外では広く普及しています。
スレート屋根の半分ほどの重量という軽さだけでなく、防水性や防音性にも優れているという屋根材です。
ただ、屋根材にコケや藻などが生えやすいというデメリットがあり、固定が甘いと強風で飛ばされるということもあります。
また、日本では扱っていない職人や業者も多く、使いにくい部分もあります。
耐用年数は20~30年ほどとなっており、1㎡あたり5000~6000円程度の費用となっています。
屋根材以外の部材にも耐用年数がある
屋根材ごとに耐用年数があるため、耐用年数が過ぎて劣化してくると交換したりメンテナンスをする必要があるのですが、屋根材以外の部材にも耐用年数があります。
ここではそれらの部材について紹介していきます。
野地板
屋根材の「下地」として使用されることが多いのが野地板です。
これは屋根を形成している垂木を隠して、屋根材の土台となっている部分です。
この野地板がないと、この上にルーフィングと呼ばれる防水シートや屋根材を載せていくことができません。
そのため、非常に重要な部材となっている野地板ですが、この野地板も普通に使用していると耐用年数は20年ほどとなっています。
野地板を交換する際には屋根材を一度剥がして確認する必要がありますので、大がかりなメンテナンス時にチェックするようにしましょう。
ルーフィング(防水シート)
雨が降ってくると基本的には屋根材がその雨を防いで屋内に水が侵入しないようにします。
しかし屋根材は雨のすべてを防げるというわけではなく、実はある程度の水は屋根の内部に侵入しています。
その侵入してきた雨水を防いでいるのがルーフィングと呼ばれる防水シートです。
ここで水を防いでいるから屋内に水が侵入していかないのです。
ではルーフィングがあればそれで大丈夫というとそうではありません。
屋根材が破損したり、劣化したりしていると雨を防ぐ効果が低下していきます。
そうなるとそれだけ多くの水がルーフィングにかかってくることとなるため、ルーフィングの劣化が早くなってしまうのです。
普通に使用していれば20年ほどの耐用年数があるルーフィングですが、負担が大きくなるとそれだけ早く劣化していくこととなるので注意が必要です。
コーキング材
コーキング材は部材同士を接合する際にどうしてもできてしまう隙間などを埋めていく部材です。
屋根材などが劣化していなくても、このコーキング材が劣化していくとそこから水が侵入したりしてしまうために、剥がれたりボロボロになっていたりすると補修しなければいけません。
コーキング材は耐用年数が8~10年程度のものが多くなっているので、定期的にメンテナンスをし、充填していく必要があります。
漆喰
「漆喰」とは世界中で古くから使用されている建築部材です。
日本でも古くから屋根瓦や石材の接着剤として、目地の充填剤として、外壁の上塗り剤として広く使われてきました。
基本的には「石灰石」「水」を加えた水酸化カルシウムを主原料としたもので、そこに「海苔」「粘土」などを混ぜて練っていきます。
この漆喰によって瓦を屋根の上に固定しているため、瓦本体が劣化していなかったとしてもこの漆喰が劣化していくと瓦を屋根の上に固定できなくなってしまいます。
そのため瓦はメンテナンスしなかったとしても漆喰のメンテナンスは行わなければいけないのです。
漆喰は10~20年ほどの耐用年数となっていますので、こちらは定期的にメンテナンスをしていくようにしましょう。
まとめ
費用や手間を考えるとできるだけ屋根材のメンテナンスは少ない方が良く、できればメンテナンスフリーが望ましいのですが、残念ながらそういった屋根材はありません。
屋根材は素材によって耐用年数にかなりの差がありますので、メンテナンスの回数を考えるのであれば耐用年数が長い素材の屋根材を選ぶと良いでしょう。
建物にどういった屋根材が適しているかわからない場合は業者と相談しながら決めるのもおすすめです。