近年人気の樹脂製貫板タフモック(プラスチック木材)について
2023/11/21
屋根は多くの部材によって形成されています。屋根で一番目をひくのは、スレートや瓦などの屋根材です。
しかし屋根の下にあるルーフィングなどの見えない箇所の部材も、屋根を守り、雨漏りから守る重要な役割を果たしています。
ここでは、最近よく下地材である「貫板」として使用されている、「タフモック(プラスチック製木材)」について特徴やメリット、デメリットなどをご紹介します。
貫板について
タフモックは「貫板」と呼ばれる部材として使用されています。
まずは貫板とはどんな役割をしているのかということをご説明します。
屋根の一番上にある水平の部分を「棟」と呼びます。
また、寄棟などで、屋根と屋根が合わさる箇所も「隅棟」と呼ばれます。
「棟」は、屋根と屋根が合わさる箇所であり、そこに設置する板金が「棟板金」です。
この棟板金を固定するために設置する下地材が「貫板」です。
棟板金は、家の頂上部にあるため紫外線の熱や、風雨の影響を受けやすく、特に熱による膨張と収縮を繰り返すことでゆっくりと板金が浮いてきます。
浮いた板金には固定する釘に隙間ができて、その隙間から雨水が入り込んで貫板が腐食するケースが多く見られます。
また湿気などの影響で貫板がひび割れを起こすこともあります。
棟板金を固定している貫板が劣化してしまうと、棟板金の固定が弱くなり、強風などで飛散しやすく、雨漏りを起こしやすい状態になってしまいます。
木製の貫板について
日本では古くから多くの建造物に木材が広く使用されてきました。
特に木材の中でも日本各地に分布しており、通気性や防水性が高くて軽量な杉が多く使用されていました。
最近では金属や樹脂、また窯業系など新しい素材も増えてきましたが、やはり木造住宅の多くには昔ながらの木材が使用されています。
貫板も最近までは木材の貫板が主に使用されていました。
木製の貫板のメリット
木製の貫板のメリットとしては、価格が樹脂製に比べて安価であり、加工が容易であり、また入手もしやすいという点があります。
木製の貫板は、樹脂製のものに比べて単価が安いので、多く使用するような現場ですと、工事費用が変わってきます。
しかし最近では世界的に木材の需要と供給のバランスが崩れたことで木材の値段が高騰しており、また円安の影響によってさらに木材の価格が上がっているため、一概には言い切れない部分もあります。
木製の貫板のデメリット
メリットが多い木材の貫板ですが、「水を吸収しやすく腐食しやすい」という大きなデメリットがあります。
棟板金を上から被せるため、普段は貫板が水に晒されることはありませんが、棟板金に浮きが生じて隙間があいてしまうと、その隙間から入り込んだ雨を吸収してしまいます。
水を含んだ木材は腐食を起こしやすく、気づかず放置していると劣化が進行してしまいます。貫板が腐食を起こすと、上にも上げたように棟板金を固定する力が弱くなり、ますます浮きが進行して、強風によって棟板金が飛散する危険もあります。
樹脂製の貫板・タフモックについて
木材が腐食を起こしやすいということで、最近代わりに使用されるようになってきたのが、樹脂製の木材です。
「人工木(じんこうもく)」「樹脂木(じゅしもく)」「合成木材」などと呼ばれます。
この樹脂製の木材はウッドデッキなど様々な建築の箇所で使用されています。
タフモックもこの樹脂製木材で作られた貫板です。
タフモックの素材や特徴
「タフモック」は、樹脂製貫板の中の製品の一つで、ケイミュー株式会社が製造しています。
素材は、ポリスチレンにゴムを添加したハイインパクトポリスチレンが基材となっています。
タフモックは樹脂製である特徴を活かし、軽量で、防水性が高く腐食に強くそして耐久性にも優れた貫板です。
さらに製品に釘位置の目安マークをつけることで施工がしやすくなっており、また雨水の通り道となる雨水排水溝や雨水排出溝が加えられていることで、雨水がたまりにくく、防水性を高めています。
タフモックのメリット
タフモックの素材はプラスチック樹脂なので、水を吸収しにくく、そして腐食に強いというメリットがあります。
水に強く、そしてプラスチックが基材ですので腐食が起こしにくく、貫板の腐食による釘抜けや、釘穴からの水の侵入、そして棟板金の飛散を防ぐことができます。
また、天然木材で作成された貫板は「ささくれ」「ひび割れ」が発生してくるものですが、樹脂製のタフモックはささくれやひび割れが起きることもありません。
タフモックのデメリット
タフモックのデメリットは、木製の貫板よりも価格が高くなりがちな点です。木材の価格も高騰してはいますが、それでも木材と比較すると樹脂製のものの方が高くなります。
また衝撃を受けると割れてしまうということがあるので注意が必要です。
タフモックの設置、交換方法
弊社でもよく行う工事ですが、既存の木製の貫板からタフモックへと交換する場合は、まずはカバーである棟板金を撤去します。
棟板金に特に傷みなどがない場合、再利用しますので、傷などがつかないように外していきます。
そして既存の貫板をすべて撤去します。
そして新しい貫板であるタフモックを取り付けていきます。
この際に、釘浮き防止のために、釘ではなくビスを使って固定をしていきます。ステンレス製を使用するとよりさびにくくなります。
タフモックを固定しましたら、その上から棟板金を被せていきます。
もちろん棟板金を貫板に固定する際も、ビスを使用します。そして棟板金の継ぎ目などから雨水の侵入を防止するためにコーキングを行って完工です。
【棟交換工事の事例】
樹脂製貫板「エコランバー」について
樹脂製の貫板にはほかに「エコランバー」という商品もあり、弊社ではこちらもよく使用しています。
エコランバーは建材メーカーであるフクビ化学工業株式会社が製造している樹脂製建材です。素材は発泡ポリスチレン樹脂です。
製品には建築基準法においてシックハウス対策として指定されている揮発性有機化合物のクロルピリホス、ホルムアルデヒドは使用されておらず、家庭や工場で発生するプラスチックを再利用して製造されています。
特徴としてはタフモックと同様に、樹脂製のため腐食の心配がなく、木材のような反りもない点が挙げられます。
ガルバリウム鋼板製の貫板のメリットとデメリットとは
近年増加している建築材として「ガルバリウム鋼板」があります。
このガルバリウム鋼板を貫板として使用することも増えてきています。
ガルバリウム鋼板のような金属製の下地を使用することで樹脂製と同じように「腐らない」「水に強い」という効果が得られます。
耐久性が高いためにメンテナンスの回数も減らすことができます。
ただ、ガルバリウム鋼板は下地自体が金属製ということもあって硬いために鉄の釘ではなく、ステンレス製のビスなどで板金と固定していくこととなります。
そういった際に金属製の弱点である「熱」の上昇や低下によって「膨張」と「縮小」を繰り返していくことでビスが緩くなったり、抜けてしまうということがあります。
ビスが抜けてしまうとその隙間や穴から雨水が侵入したり、板金が落下したりしてしまうことがあるので注意が必要です。
まとめ
棟板金を固定するための貫板には「木製」「樹脂製」「金属製」など色々な素材による種類のものがあります。
昔は貫板といえば木製のものが主流でしたが、最近では「軽量化」「耐久性」などの理由で樹脂製のものが増えてきています。
プラスチック樹脂製の貫板である「タフモック」もそのうちの一つとなっています。
貫板の交換工事を行う際にはタフモックのような樹脂製の貫板に交換するというのも良いでしょう。