屋根の立平葺きとは?メリット・デメリットについて説明
2024/05/01
近年、金属屋根の一種である「立平葺き」が注目されています。
屋根には瓦屋根、スレート屋根、金属屋根と様々な種類があり、どの屋根材を選ぶかによって耐用年数や機能が異なります。
同じ金属屋根でも葺き方によって特徴が異なります。
この記事では、立平葺きの特徴やメリット・デメリットについて解説します。
そこでここでは金属屋根で多く使われている「立平葺き」の特徴、そしてメリットやデメリットについて紹介していきたいと思います。
立平葺きを検討されている方、ぜひ参考にされてみてください。
「立平葺き」について
屋根材の種類を気にする、自分で調べて選びたいという方は増えています。弊社でも屋根材をご指定されるお客様も年々増えている印象です。
テレビコマーシャルなどでも屋根材の紹介をしていることが関係しているのかもしていません。
しかし具体的な葺き方まではよほど興味がなければよく知らないという方も多いのではないでしょうか。
そこでここでは金属屋根の葺き方の種類、そして立平葺きの特徴についてご紹介します。
金属屋根の葺き方は大きく分けると2種類
最近では、軽量で耐久性のある金属屋根が屋根リフォームや新築でも選択されることが多くなっています。
金属屋根は、製品名でいえばスーパーガルテクトや弊社でおすすめしているディプロマットスターなども分類としては金属屋根に相当します。
これの金属屋根の施工方法には大きく分けて「縦葺き」と「横葺き」の2種類があります。
縦葺きは、棟に対して垂直方向に、屋根材を縦向けに配置していく方法です。
水はけを効率的にする葺き方で、傾斜の少ない屋根に適しています。立平葺きはこの縦葺きに属します。
一方で横葺きは屋根材を棟に対して水平方向に横に並べて固定する方法です。上で上げたスーパーガルテクトやディプロマットスターは横葺きの屋根材です。
立平葺きの特徴
上で述べたように立平葺きは縦葺きの屋根材です。
事前に工場などで加工した、長尺の屋根材を縦方向につなげて固定していきます。
水が流れ始める棟側から、樋のある軒まで水の流れを遮るものが何もないのが大きな特徴です。
屋根材の素材はガルバリウム鋼板が多く、以前金属屋根でよく使用されていたトタンよりも耐食性が高く、錆びにくくなっています。
そのため排水性が非常に高く、雨漏りしにくい屋根といえます。
製品としては、セキノ興産の「立平ロック」や、JFE鋼鈑株式会社の「立平333」などがあります。
この長い一枚の鋼板を現場に持ち込んで屋根材同士を固定していくのですが、この固定方法には主に2種類あり、そちらについては後で詳しく説明いたします。
瓦棒葺き屋根との違い
立平葺きとよく似ている屋根に、「瓦棒葺き」があります。
瓦と名前に入っていますが、瓦ではなく金属屋根の一種です。この瓦棒葺き屋根は、屋根材(板金)同士のつなぎ目に、芯材として木材を使用しており、その木材に板金を巻きつけて固定していきます。
木材のため、この内部の芯材が入り込んだ雨水によって腐食を起こすと、錆が広がって屋根材を固定する力が弱まります。
立平葺きではつなぎ目に木材を使用せず、金属同士を接合します。そのため瓦棒葺きは、立平葺きに比べると劣化が早い葺き方であるといえます。
また多くの瓦棒葺き屋根は、トタンが使用されており、ガルバリウム鋼板よりも錆に弱く劣化しやすいため、最近では瓦棒屋根はあまり使用されず、立平葺きに葺き替える工事が多くなっています。(瓦棒葺きの中には、芯材を使わないタイプの葺き方もあります)
立平葺きの屋根材の固定方法とは
上でご紹介したように、立平葺きの固定方法には主に二つの方法があります。
それは「ハゼ葺き」と「嵌合式」です。こちらではこの二つの方法についてご紹介します。
ハゼ葺きとは
ハゼ葺きは、結合する金属の端同士を噛み合わせて折り曲げて固定する方法です。
比較的古くから使用されている方法で、立平葺きを「縦ハゼ葺き」と呼ぶこともあります。
現場で一か所一か所職人が板金を折り曲げて加工していくため、漏水を防ぎ確実に固定するには職人の技術が求められます。また工期もその分必要となります。
嵌合式とは
嵌合式(かんごうしき)は、屋根材同士にあらかじめ組み合わさるような凸部と凹部を設けておき、それを嵌め合わせることで固定する工法です。
現場で職人が金属を折り曲げて加工するハゼ葺きに比べると比べると施工が容易で、工期も短縮できます。
最近では嵌合式が主流となっており多くの製品ではこの嵌合式が採用されています。嵌合部に水が入らないように水密性が高く、止水材が標準で入っているものなどもあります。
立平葺きのメリットについて
こちらでは立平葺きのメリットをご紹介します。
排水性が高い
立平葺きは、特徴の項目でご紹介したように、縦方向に一枚の長尺の板金を棟から軒に縦向きに設置する工法です。
雨の流れを遮るものが途中になく、雨水が屋根に溜まらずにスムーズに流れ落ちる特長があります。水平方向に段差やつなぎ目がないため、雨水が滞留せず、またつなぎ目などから雨が入り込みにくい構造となっています。
そのため非常に排水性が高く、雨漏りをしにくい屋根であり、特に降雨量が多い地域に適しています。
耐久性が高い
立平葺きの素材はガルバリウム鋼板が主に使用されています。
ガルバリウム鋼板は鋼鈑にアルミニウム・シリコン・亜鉛のめっきが施されており、トタンよりも腐食に強く、耐用年数も約20年あります。
そして雨漏りをしにくい構造であること、接合時に内部に芯材を用いないため、腐食にも強いことから耐久性が高いといえます。
また金属屋根の特性として木材よりも腐食に強く、火災や虫害にも強いため長く使用できます。
施工期間が短く、工事コストを抑えられる
立平葺きは、あらかじめ屋根に合わせてカットや加工した屋根材を搬入して、現場で組み合わせていきます。
長尺ですので、継ぎ目もスレートなどに比べると少なく、屋根同士の結合も嵌合式で行えば、施工も比較的容易であり、施工にかかる手間や人員が削減できるため、工事の短縮につながります。
工期が短くなればそれだけ工事費用も削減できるので、他の屋根材に比べて工期が短い上に、施工にかかるコストが抑えられるのが魅力です。
リフォームや新築でコストを抑えたいときに採用されることもよくあります。
軽量で地震に強い
立平葺きは金属屋根のため、屋根材の材料が軽量です。そのため屋根全体の重さが軽くなります。
屋根が重くなると地震が行ったときに建物の揺れが大きくなり耐震性が低下してしまいます。
瓦の重量は1㎡あたり約50~60㎏ですが、ガルバリウム鋼板は約5kgで約1/10の重さしかありません。瓦から立平葺きへと葺き替えることで大きく耐震性が向上します。
傾斜があまりない建物の屋根でも使用できる
屋根材によって、施工できる屋根の角度(勾配)が決まっています。
屋根の傾斜が急であるほど雨が流れていきやすく、雨漏りも起こりにくいといえます。
屋根材に定められた勾配の屋根に正しく施工を行わないと、勾配不良で雨水がうまく排水されずに雨漏りの原因になることもあります。たとえばスレート屋根は2.5寸以上の勾配が必要ですので、勾配が2寸の屋根に適していません。
立平葺きは排水性が高いため、傾斜の緩い屋根にも施工が可能です。
立平葺きは2.5寸以下の屋根でも施工が可能で、製品によっては0.5寸の屋根にも施工が可能なものがあります。
立平葺きのデメリットについて
メリットが多い立平葺きですが、その反面も当然デメリットもあります。
立平葺きは金属屋根ですので、金属屋根のデメリットがそのままデメリットともなる部分があります。
こちらでは立平葺きのデメリットをご紹介します。
施工できる屋根の形状に制約がある
立平葺きは、尺の長い一枚の鋼板をあらかじめカットして現場で施工していく葺き方ですので、シンプルな形状の屋根に適しています。
その反面、屋根の形や構造が複雑な場合は対応しにくい面があります。
そのため屋根形状が複雑である住宅や、屋根の傾斜が異なる部分が多い建物などには適していません。
複雑な屋根に施工を行って加工が多くなると、立平葺きのメリットである工期が短く、コストが抑えられるという点がなくなってしまう恐れもあります。
ご自分の屋根の形状が立平葺きに適しているかどうか気になる方は、事前に業者に確認しておくと安心です。
断熱性が悪い
これは金属屋根全般に言えることですが、金属は熱伝導率が高いため、夏に屋根が高温度になるとその熱が内部に伝わって特に屋根の下の階が暑くなります。また冬は冷たい外気温が伝わり、室内の暖かい温度が逃げて寒くなりがちです。
立平葺きは断熱性が低いため、夏は暑く冬は寒くなりがちですので、気になる方は断熱材を別途追加するか、表面に断熱塗装を行うなど他の断熱対策が必要です。
最近では金属屋根でもスーパーガルテクトのように断熱材が一体化された製品も販売されています。立平葺きの場合は別売りの断熱材を裏に施工することになります。断熱材を売プションでつけると高額になることもあるため、費用を抑えたい場合は注意が必要です。
遮音性が低い
これも金属屋根の特徴ですが、金属は雨音や風音を通しやすいため、雨音が気になる場合があります。
上でご紹介したスーパーガルテクトのような断熱材を真ん中にはさんだ形の金属屋根は、遮音性も向上しますが、立平葺きは金属そのままですので、雨音が響く可能性が高いといえます。
特に強い雨が降る地域や、騒音が気になる方には、遮音材や遮音シートを別途施工する方法もあります。
まとめ
立平葺きは排水性が高く、雨漏りにも強い屋根です。
ガルバリウム鋼板製のため、耐用年数も高く、工期が比較的短いためコストパフォーマンスが高いメリットもあります。
その反面、屋根の形状によっては施工できないことや、断熱性や遮音性は高くありません。
メリットやデメリットの両方を考慮した上で、立平葺きがお家の屋根に適しているか考慮してみてください。
一般的には、金属屋根に葺き替えやカバー工法を行いたいけれども費用を抑えたい、勾配の少ない屋根の屋根リフォームをお考えの方に向いています。
山田工芸ではお客様の屋根を調査し、そしてご希望やご予算をお伺いした上で、最適な屋根材をご提案いたします。
複数の屋根材や葺き方による見積も提出していますので、ご希望をお聞かせください。
山田工芸では立平葺きのカバー工法や葺き替えなどの施工実績も豊富にございます。
是非、山田工芸の施工実績をご覧ください。