屋根の防水シートとは?役割を解説
2023/04/12
戸建てやアパートなどの上部に設けられる「屋根」は、住む人や建築物自体を風雨や積雪、寒暑、太陽光、騒音などから守る、なくてはならない大切な構造部です。
建築基準法では、柱や壁があっても、屋根の無い建物は建築物とは認められておらず、特に家屋には欠かせないものだといえます。というのも、たとえば屋根の不具合から生じる雨漏りは、建物の強度低下、住民の健康被害を招くからです。
一般的に、外から見える外壁材や屋根材などが、雨風から建築物を保護しているように思われているようですが、そうではありません。屋根の内部にも防水機能が施されており、雨水の家屋への侵入を食い止めているのです。
建物の外側の防水機能(屋根や外壁など)を「1次防水」、内側に施工される防水シートは「2次防水」といいます。重要な構造部である屋根に、深刻なダメージを与える雨水に対しては、このように2段構えの防水機能が施されています。
特に2次防水は、1次防水を通過した雨水を浸水させない役割があります。この部分に劣化や不具合が起きると、雨漏りが出る可能性が高くなるため、きちんとした施工やこまめなメンテナンスが必要だといえます。
そこで雨漏対策の要といえる、2次防水、防水シートについて解説致します。
屋根の種類と基礎構造
ひと口に屋根といっても、様ざまな形状や種類があり、建物の使用用途、立地、気候風土などに適した部材や施工方法によって組み上げられています。
屋根には形状として、「勾配屋根」と「陸屋根」の2種類に分類することができ、それぞれの特長は次の通りです。
勾配屋根はその名の通り、勾配が付いた屋根をいいます。住宅など、一般的な建物に見られる形状で、勾配屋根にも複数の種類があります。主な屋根は下記になります。
・片流屋根:屋根の傾斜が、一方だけに流れている形状。
・切妻屋根:屋根といえば、誰もがイメージする、最もポピュラーな2面だけの山形形状。屋根の最頂部である棟から下に向かい、二つの傾斜面で形成されている。
・寄棟屋根:大棟(おおむね)の両端から四方向に隅棟(すみむね)が降り、四面に分かれている屋根。
・入母屋根:切り妻と寄せ棟を合わせたような形状。上部は切り妻屋根のように二方へ傾き、下部は寄せ棟のように四方に傾斜する。寺院や城郭などで多く見られる形式。
・方形屋根:「ほうぎょう」と読み、ひとつの頂点から同じ角度で四方へ傾斜した、ピラミッドのようなイメージの屋根。
陸屋根は「りくやね」と読み、「平屋根」ともいわれています。勾配のない平面状の屋根で、ビルやアパート、マンションなどの建築物に多く見られます。平面とはいえ、「水勾配」という、水を流すためのわずかな傾斜は設けられています。なお、豪雪地帯では、落雪事故防止のため、一般住宅で用いられることもあります。
次に屋根の基本的構造を、一般住宅を例にとって説明します。
・屋根の骨組み:多く使われているのは「小屋組」で、屋根の重みを、柱や梁に力を伝達させながら支える工法です。日本の伝統的な工法の「和小屋」、欧米の住宅構造を取り入れた「洋小屋」に大別され、前者は束(つか)と梁で構成され、後者は三角形のトラスを用いた仕組みになっています。屋根の一番高いところにある棟木(むなぎ)から軒先には、傾斜に沿って「垂木(たるき)」が掛けられ、その上に屋根の下地板である「野地板(のじいた)」を乗せます。
・防水シート(ルーフィング):下葺き材(したぶきざい)とも呼ばれる、野地板の上に貼る防水用の建材です。屋根材の隙間から入った雨水が、屋根の下に漏れないようにする建材で、いくつかの種類があります。なお、「垂木」「野地板」「防水シート」の3つは、屋根の性能を維持し、雨漏りを防ぐための主要部分です。
・屋根板: 防水シート(ルーフィング)の上に設置され、屋根の1次防水を担う仕上げ材で、様々な素材があります。下記に代表的な素材をあげておきます。
・金属系:軽量化で自由な加工が可能。一般的に耐久性に優れ防水性が高い。主な素材は、ガルバリウム鋼板、トタン、銅板、アルミなど
・スレート系:薄く軽量なので、建物にかかる負荷が少なく耐震性が高い。 また、防水性・耐火性・耐候性・耐久性を持ち、屋根材に適している。化粧スレート(カラーベスト・コロニアル)、天然スレートといった種類がある。
・セメント系:セメント(モルタル)で成形し塗装した屋根材。丈夫ではあるが、比較的衝撃に弱く割れやすい。
・瓦:古くから日本家屋の屋根として使われている、粘土を焼いて形成された屋根材。断熱性や遮音性に優れている。釉薬瓦(うわぐすり)、無釉瓦(むゆうかわら)、いぶし瓦などの種類あり。
・アスファルトシングル:北米、カナダや米国で普及している屋根材。ガラス繊維(グラスファイバー)の基材にアスファルトを浸透させ、砂粒で表面を着色している。軽量で耐震性があり、防音性に優れている。
防水シートの特徴と耐用年数を知って、効率的な屋根のメンテナンスを
屋根の基本構造をお伝えさせて頂いたところで、雨水侵入を最終的に防ぐ大切な役割を担う「防水シート(ルーフィング)」をさらに詳しく見てみましょう。一般住宅で使用されている防水シートには、性能やそ素材によって、いくつかの種類に分けられています。
・アスファルトルーフィング:ストレートアスファルトを基材に浸透させたシート。止水性に優れ、価格も手頃で、一般住宅での普及率が高い。透湿性が低く、結露しやすいのがデメリット。耐用年数/約10年
・改質アスファルトルーフィング:素材はアスファルトルーフィングと同じだが、ポリマーや合成ゴムなどを含有し、より耐久性が高い。ただ、透湿性が低いため、結露しやすい。耐用年数/約20~30年
・透湿防水ルーフィング:防水性に優れ、室内の湿気を湿気を逃がしやすい性能を持っているため、住宅内部の傷みを進行しにくくする効果が期待できる。費用の高さはデメリット。耐用年数/約50年
・高分子系ルーフィング:主に塩化ビニールを原料とする防水シート。軽量で耐久性が高く、破れにくいことに加え、伸縮性に優れ、ひび割れが起きにくい。遮熱性の素材もあり、暑さ対策も期待できる。耐用年数/約15年
・粘着層付きルーフィング:改質アスファルトルーフィングシートの裏面が粘着仕様になっている防水シート。タッカーなどの工具を使わなくてもよいため、カバー工法で良く用いられている。湿気を逃がしにくい点はデメリット。耐用年数/約30年
・不織布ルーフィング:不織布ベースの防水シート。柔軟で施工性が高く、下地の形に合わせることができる。また耐久性に優れており破れにくい耐用年数/約30年
防水シートを選ぶ時は、基本的に屋根材よりも耐用年数の長いものがおすすめだといえます。というのも、シートの交換時には、屋根材を剥がす必要があるからです。せっかく高性能の屋根仕上げ材を選んだのに、防水シートの耐久性が伴っていなければ、耐用年数を待たずに屋根を交換しなくてはなりません。
防水シートは、屋根材のメンテナンス、葺き替え時期を目安として選ぶと、無駄な出費をすることなく、効率的に雨漏りから家屋を守ることがものです。