屋根の棟換気について徹底解説
2023/01/16
近年、高気密・高断熱の住宅が多くなっています。多くの住宅では屋根や壁に断熱材を配置することで夏は涼しく、冬は暖かい家で快適な生活を送っている人も多いでしょう。
しかし、熱気と湿気が充満しているように見える部屋がいつも快適を保っているのか?不思議だと思いませんか?また、このような状態で木材は何故痛まないのか?疑問に思われる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
実は家の中には、快適な室内空間をつくるために、さまざまな仕組みや方法が取り入れられています。高い気密性と高い断熱性能を保ちながら、住まいを傷めないためには「換気」がとても重要なのです。今回は屋根裏換気の必要性と、それに最適な「棟換気」についてご紹介します。
棟換気とは?
棟換気とは、屋根裏にこもりがちな「熱や湿気」を外に逃がすために、屋根上にあたる棟部に取り付ける器具です。
部屋の換気が悪いと、夏は室内の温度が上昇しやすく、冬は結露が発生しやすくなります。棟換気を設置することで、屋根裏に溜まった湿気や熱がこもるのを防ぐことができます。
日常生活で屋根を見る習慣がある方は少なくないと思いますが、機会があれば屋根の頂点部分に設置されている「棟換気」をのぞいてみてください。頂点に沿って小さな穴や隙間が確保されている部分があれば、それが棟換気となります。
ガルバリウム鋼板製の換気棟が素材として使われることが多く、屋根の種類に合わせて施工すると一体感が生まれ、仕上がりも美しくなります。
何故、棟換気が必要なのか?
そもそも棟換気はなぜ必要なのでしょうか?
屋根裏が換気されていないと、屋根裏の温度は60℃まで上昇すると言われており、これが非常に暑いことは容易に想像できるでしょう。このような暑い環境では、木造建築の場合、木材に必要な水分まで蒸発してしまい、木材の痛みが加速します。
また、屋根裏の熱がそのまま室内に伝わることもわかっています。その結果、居住空間が暑くなり、エアコンの効きも悪くなります。
このように屋根裏の換気は家にとって重要だといえます。前述したように棟換気の一般的な役割は、屋根裏にたまる湿気や熱気の排出です。
ご存知の方も多いと思いますが、暖かい空気は上昇し、逆に冷たい空気は下降していきます。そのため、屋根裏でも熱気が上がるので、棟換気を効率的な熱対策を講じられるわけです。
棟換気を設置するメリット
それでは棟換気を導入するメリットはどのような点なのでしょうか?先に解説した温度、湿度対策だけでなく、それによる家を守る為の大事な効果もあります。
湿度を下げる
近年、天井断熱工法が普及しているため、家の「気密性」「断熱性」は非常に高くなっています。
断熱性と気密性に優れた家は、寒い冬の間などは助かる存在ですが、一方で家の屋根裏や他の上部に湿気や熱が蓄積すると、躯体などに対するダメージが大きくなってしまいます。何故なら冬場は結露しやすく、その湿気が屋根裏にたまる傾向がある為です。
このような点に対し棟換気はこれら湿気の逃げ道を作り、結露によるダメージを軽減できるのです。
屋根裏の熱を下げる
夏は、太陽の熱で屋根が熱くなるため、屋根裏部屋の温度が上がります。そうなると部屋全体の温度が上がりやすくなり、エアコンによる効果も下がり気味です。屋根裏の適切な換気は、光熱費を削減するために重要といえるのです。
換気棟を設置することで、熱気を外に逃がすことができるため、結果省エネにつながります。
シロアリなどの発生防止
3つ目として、棟換気による家の中の換気促進が、虫の繁殖を抑制する効果があります。
シロアリやダニなどの湿気を好む昆虫は、家の中に湿気がこもり、換気ができなくなると増加する傾向にあります。ご存じの通りシロアリが大量発生し家屋の柱や壁に巣を作ると、地震や台風などの災害時に家屋が倒壊するおそれがあります。また、ダニなどの小さな虫はハウスダストとして、小さなお子様の喘息やアレルギーの原因となることがあります。
これに対し棟換気は、虫の発生リスクを抑制、結果家族の健康にも大きなメリットがあります。
換気棟が不人気な理由
前述のように屋根裏の上部には自然と熱気が溜まるため、通常の換気だけでは不十分です。しかし、効果的な「棟換気」はあまり普及していないのが現状です。原因はとても簡単で、換気棟は屋根の上部に穴を開けて施工するため、多くの方は「雨漏り」が気になり躊躇するようです。
確かに建物は一度漏水すると被害が甚大なので、理解のない方が「雨漏りしないか?」と心配するのも当然です。また、ハウスメーカーや建築会社はリスク回避のため、消費者が嫌う建物換気を避ける傾向にあるようです。
しかし、ここで申し上げておきたいのは、熟練した屋根職人である屋根工事業者が丁寧に作業を行えば、「棟換気」による雨漏りはありません。設置する設備はメーカーにて雨漏り対策を施しており、換気口から雨水が浸入することはありません。
棟換気の種類
次に棟換気の種類について解説しましょう。
屋根裏換気を行う方法は大きく3つあります。これら単独でも効果はありますが、一般的にはこれらを組み合わせて設置し、効果を高めるケースが増えています。
棟換気
屋根の頂点部分に設置する換気方法です。高い高価が期待できますが、直接雨が大量に当たる場所に穴をあけることになるため、設置には高い専門技術が必要となります。
妻換気
が息を取り込める、切妻の妻に設置する換気方法です。一般的には「ガラリ」と呼ばれる金物を取り付ける工法として有名です。
垂直面に設置する為棟換気と比べ雨による影響は少なくなりますが、直接雨がかかることは変わりありませんので、こちらも設置には高い専門性が必要といえます。
妻先換気
妻先換気とは軒天側に取り付ける換気口となり、屋根裏換気の中では最も一般的な工法です。屋根上部にこもった熱を排出する棟換気と組み合わせるのが理想ですが、残念ながら多くの家では軒先換気のみとなっています。
最近は軒の短い家が増えているので、軒先や軒の中央、軒と壁の間に取り付けるタイプなど、バリエーションも豊富です。
棟換気は後付けも可能
ここまで棟換気について解説してきましたが、この記事を読まれている方の中には既に家を建築された後の方もいらっしゃるのではないでしょうか?となると気になるのが、「棟換気は後付けできるのか?」という点になります。
結論から言えば棟換気は後付けによる設置は可能です。多くの施工業者では後付けによる棟換気設備の設置を行っています。但し、後付けする場合、既存建物の構造をしっかり把握した上で設置しなければならず、新築時以上に知識や技術が必要となるケースがあります。このため、業者選びは慎重に行いましょう。
まとめ
換気棟は屋根裏に換気の循環をつくり、住宅の劣化やカビ、害虫のリスクを軽減する対策として有効です。また、換気しやすくすることで家の中の湿度が下がり、蒸し暑い夏の暑さ対策にもなります。
また換気棟だけでなく、他の換気方法と組み合わせて換気することで、さらなる湿気対策につながります。また、既に立っている家に対し後付けも可能です。