屋根修理のDIYはNG!?高所作業の危険性について解説
2023/09/28
台風が直撃した時などは屋根が被害を受けやすく、破損したりすることも多くあります。
そういった際には屋根工事業者などに修理を依頼するのが一般的ですが、そういった時期は業者も混みあってなかなか修理に来てくれないということもあります。
雨漏りがしている場合などはそれを防ぐために自分で修理する、DIYをするということもあるのですが、これは基本的には「NG行動」だと言えます。
ここではなぜ屋根修理のDIYがNGなのか、高所作業の危険性について紹介していきたいと思います。
屋根工事、高所作業はとにかく危険なものである
自分で屋根のDIYをするということをおすすめしない理由はいくつかあるのですが、そのもっとも大きい理由が「危険性」です。
実際に台風が来た際に屋根に上って転落するという事故が数多く出ています。
2019年に関東地方に上陸した台風15号の時には屋根に上って転落してケガをした人が100人以上、うち3人が死亡しているという事件が起きています。
これは届け出があった数ですので実際にはもっと多いと言われています。
高所からの転落はプロとして仕事をしている建設業界で多く発生しています。
平成30年に出された資料によれば、
- ・5年間で死亡災害1630人、うち680人が墜落・転落
- ・5年間で死傷災害78329人、うち26819人が墜落・転落
となっています。
専門的に仕事をしている人でもこれだけの数の人が高所からの墜落、転落事故を起こしているということを考えれば、素人が屋根に上るということの危険性がよくわかると思います。
また、認識の甘さということもあります。
屋根から転落というと2階や3階からというイメージがありますが、実際には1階の屋根からの死亡事故も数多く起きています。
雪国で雪下ろしのために屋根によく上る人はその危険性を知っているために注意をするのですが、普段屋根に上ることがない人が屋根に上って作業をしていると危険性に気付かないために大きな事故につながるのです。
そもそも無許可の屋根工事は法令で禁止されている
屋根の塗装や簡単な補強であれば自分で行っているという人がいるかもしれませんが、実はそれは法令違反になっている可能性があります。
「労働安全衛生規則第518条(厚生労働省)」には以下のように記されています。
1.事業者は、高さが2メートル以上の箇所(作業床の端、開口部等を除く。)で作業を行なう場合において墜落により労働者に危険を及ぼすおそれのあるときは、足場を組み立てる等の方法により作業床を設けなければならない。
2.事業者は、前項の規定により作業床を設けることが困難なときは、防網を張り、労働者に安全帯を使用させる等墜落による労働者の危険を防止するための措置を講じなければならない。
つまり高さが2m以上の場所で作業をする場合には足場を組み立てる必要があるということになります。
はしごなどを使って屋根に上り、足場も命綱もないままに作業をするということは法令違反なのです。
こうした点からも素人が屋根に上って作業をするのはNG行動だということがわかります。
危険性以外の屋根修理のDIYをすすめられない理由
専門誌だけでなく、あらゆる情報をスマホで簡単に集めることができるようになってからDIYを行うという人も増えてきています。
屋根修理に関してもそういった人がいるのですが、これは危険だというだけでなく他にもおすすめしない理由がある行為です。
ここではそれらの理由を紹介していきます。
適切な材料、道具を選ぶことができない
例えば屋根の塗装を自分で行うといった場合は、塗料選びから自分で行っていくこととなります。
屋根の塗装に使用する塗料は「アクリル系」「シリコン系」「ウレタン系」「無機質系」「フッ素系」などさまざまな種類のものがあります。
それぞれに特徴があるため、その建物の形状や屋根材の種類、立地条件などに合わせて最適なものを選んでいかないといけないのですが、素人がそれを行うのは困難です。
結果的に適していない材料を選んでしまうことも多くあります。
これは屋根材についても同様です。
屋根材も瓦屋根、金属屋根など多くの種類のものがあり、修理に必要なものがどれなのかということを正しく把握するのは非常に難しいことです。
素人が自分で材料を選ぶ際に適切なものを選ぶことができないというのは屋根の安全性や耐久性を考えたときに致命的な問題となります。
適切な方法で施工できない
建物のためにDIYをしようとしても適切な方法で施工しなかったために状況が悪化するということもあります。
屋根材、塗料、シーリングなどは正しい使い方があり、それらの方法が適切でなければ後でトラブルになることがあります。
屋根材の設置の仕方が適切でない、塗装の塗り方が正しくない、シーリングの打ち方が間違えているといったことが起こりうるのです。
特に棟板金などの周囲を塗料やシーリングですべて埋めてしまうということは素人にやりがちな失敗です。
必要な隙間まですべて埋めてしまうことによって外部に湿気を排出することができず、内部に湿気が溜まってしまって雨漏りの原因になるということもあります。
中には雨水が排出されて流れていく道をシーリング材ですべて塞いでしまったために雨水が建物内部に入っていってしまったということもあります。
やはり適切な材料を使って適切な方法によって工事を行うことが重要なのです。
後で火災保険を利用できなくなる可能性がある
これも自分でDIYを行うことのデメリットです。
本来屋根などが自然災害によって被害を受けた場合は火災保険の支給を受けることができる場合があります。
ただ、どういった場合でも無条件に保険金が支給されるというわけではありません。
自然災害などで屋根が破損したら、屋根の修理業者に見積もりをとり、業者を打ち合わせをした上で修理を行ってもらいます。
この時、破損場所の写真撮影や修理した後の撮影なども業者に行ってもらいます。
これらの写真(画像)や見積書などとともに保険金請求の書類手続きをして保険会社に送付すると調査員が派遣されてきて修理箇所などを調査します。
それらをすべて踏まえた上で、認定されると保険金が支給されることとなります。
しかし、屋根が破損したからといって自分で屋根に上り、自分で修理をしてしまうとこういった正式な手続きができなくなる可能性があります。
どの部分をどのように修理したのか、修理する必要があったのかといったことを専門的に答えることができず、書類を用意することができないために火災保険が適用されないということがあるのです。
自分で修理しようと考えている場合は、こういったことも考えて行う必要があります。
実際にあった屋根修理のDIYの失敗例
色々な理由で屋根修理のDIYはおすすめできないのですが、ここでは屋根修理のDIYを行って実際にあった失敗例を紹介していきます。
塗装を失敗した
屋根の塗装は外壁よりも雨風にさらされることが多いために劣化しやすいと言われています。
塗装の耐用年数が過ぎてくると専門業者に塗装をし直してもらうというのが一般的なのですが、自分で塗料を買ってきて塗装をするという人もいます。
ただ、屋根は単純に塗料を塗っていけばよいというわけではありません。
屋根の清掃や洗浄を行い、ケレンなどで表面を平らにして下地処理を行った上で塗っていく必要があるものです。
しかし実際にあったこととして、しっかりと下地処理をしないままに塗料を塗っていって数か月程度で塗装が剥がれてしまったということがありました。
また、スレート屋根では塗装を行うと必要な隙間も塗料で埋まってしまうことがありますが、この場合は「縁切り」と呼ばれる作業で隙間を作っていく必要があります。
この作業もやらなかったために雨水が外部に適切に排出されなくなって雨漏りが発生したということもあります。
縁切りをしないと塗装後に屋根の広い部分で雨漏りがすることが多いのです。
排水の出口をコーキングで塞いだ
これも屋根修理のDIYで多い失敗です。
屋根材の下部分にはルーフィング(防水シート)が野地板の上に設置されています。
屋根材を通過した雨水もこのルーフィングによって防がれるようになっているのです。
このルーフィングに溜まった雨水は排水されるようになっており、その出口が設置されています。
ただ知識がない人からするとこの排水口を「隙間だ」としてコーキング材などで埋めてしまうということがあります。
排水の出口を塞いでしまったために、雨水が適切に排水されることなく屋根裏に溜まっていき、それが雨漏りにつながるということが多いのです。
塗料を隣近所に飛散させた
これも実際に多いトラブルです。
専門業者が塗装工事を行う際には隣近所に塗料が飛散しないように養生ネットを張ったりします。
こういったことをしっかりとしていても隣の家の壁や車、自転車などに塗料が飛散してしまうということがあるのです。
それを個人がDIYで行う時などはほぼ養生ということは行われていません。
そうして養生ネットなどを設置しないままに塗装を行い、塗料が飛散してしまって隣の家の建物に付着したり、車や自転車を汚したりしてしまうことがあるのです。
そしてこの場合、個人が法令違反をして作業をしていたということから保険が認められないということもあり、大きな出費やトラブルに発展することが多いので注意が必要です。
まとめ
屋根修理は塗装が薄くなったり、自然災害で破損したときなどは自分でDIYでやりたいという人がいるかもしれません。
しかし、実際には屋根修理をDIYで行うのは危険を伴うだけでなく、施工の失敗や材料の選別ミスなども多く起こります。
特に高所からの墜落、転落は大きい事故につながりやすいということもあります、命の危険にかかわることですので絶対に避けるようにしましょう。